近畿老人福祉施設協議会

お知らせ

「介護保険制度の見直しに関する意見」とりまとめ(第37回介護保険部会)


2010年11月26日

11月25日に開催された第37回介護保険部会において、介護保険制度の見直しに関する意見とりまとめに向けた最終の議論が行われた。審議に先立って、先に内閣府が実施、公表した「介護保険制度に関する世論調査」結果の概要が事務局から報告された。

「介護保険制度に関する世論調査」結果の主な特徴

◎介護保険制度導入による効果については、「良くなったと思う」と回答した者が過半数(51.3%)を超えた。

◎自分自身に介護が必要となったときに困る点としては、「家族に肉体的・精神的負担をかけること」(73.0%)とする意見が一番多く、次に「介護に要する経済的負担が大きいこと」(60.1%)が挙げられている。

◎介護を受けたい場所については、「現在の住まいで介護を受けたい」と考えているものが最も多くなっており(37.3%)、その理由として「現在の住まいで生活を続けたいから」を挙げる者が一番多い(82.8%)。なお、この際の介護の形態については、家族介護と外部の介護サービスの組み合わせを望むものが73.9%となっている。

◎介護サービスを充実させた際の費用負担について、公費(税金)負担の引き上げを挙げる者が41.3%、負担割合は変えず公費・保険料・利用者負担のそれぞれの負担を引き上げるとする者が20.1%となっている。

◎今後の行政に対する要望としては、「介護人材確保のために、賃金アップなどの処遇改善」(52.0%)、「認知症の人が利用できるサービスの充実」(48.3%)、「24時間対応の在宅サービスの充実」(47.7%)に対する意見が多い。


これに対して委員からは、「介護保険制度導入による効果について「良くなった」と回答した者が過半数を超えたことよりも、「良くなったと思わない」という回答が3割弱あることを厳しく受け止めるべき」、「高齢者介護に対する不安は、平成15年調査よりも増大しており、(部会意見とりまとめの前提として)介護保険制度を積極的に評価することにはやや無理があるのではないか」といった意見が出された。

続く意見書の審議は、前回の部会で示された素案に対する各委員の意見等を踏まえて修正された(案)に即して行われたが、引き続き多くの意見が出された。意見の中には、「とりまとめの時間が短すぎる」、「これまでに述べてきた意見の反映が十分ではない」、「「意見があった」「指摘もあった」というような表記では十分に意を汲んでいるとは言えない」等、部会運営や意見書の性格に触れるものも複数の委員から出されたが、さまざまな立場をもった委員が全会一致となることは非常に難しく、両論併記となる点はやむを得ないとの考え方を支持する声が多くあった。

また、意見書とりまとめの基本姿勢として、「介護保険制度創設の理念をあらためて確認し、それに立ち返るべき」、「介護保険制度が創設されてからの10年間をしっかりと総括することが大切」との意見が出され、今回の制度見直しに関する議論とは別にそのような場を設けることの必要性が複数の委員から指摘された。

意見書の各内容については、①負担と給付のあり方、②補足給付について、③介護職員処遇改善交付金について、④地域包括ケアの推進、といった内容に委員からの意見が集中した。

①負担と給付のあり方では、生活援助などの要支援者・軽度の要介護者にかかる給付を削減することや、利用者負担の引き上げの是非をめぐって引き続き委員から賛否両論が提起された。また、意見書(案)に新たに追加された「ペイアズユーゴー原則の下では、現場ニーズに見合った給付の議論が難しい等の意見もあった」との記述をめぐって、厚生労働大臣の諮問機関である審議会としては、現政権の「ペイアズユーゴー」の原則を否定することは適当ではなく、そのことを前提として議論し、報告をとりまとめるべきとの意見も出された。なお、居宅におけるケアプランの作成等のケアマネジメントへの利用者負担の導入をめぐっては、複数の委員からあらためて反対するとの強い意見が出された。

②補足給付については、複数の委員から保険財源から給付していることについての疑問が示され、「制度として矛盾しているのではないか」と見解をただされた事務局からは、現行の保険制度でもありうる仕組みではあるが、将来的には社会保障全体の見直し議論の中で一体的に検討していくべき課題と認識しているとの説明があった。なお、補足給付のあり方を含む「6 低所得者への配慮」の項については前回示された(素案)から大きな変更は加えられていない。

③介護職員処遇改善交付金については、その必要性に対する反対は聞かれなかったものの、期間終了後の取り扱いが焦点となっており、介護報酬に含めるべきか、否かをめぐって各委員からは引き続き両論が提起された。また、一定期間をかけて移行していく方法も考えられるのではないか、との意見もあった。なお、今回示された(案)においては、「処遇改善交付金を廃止し、介護報酬改定により対応する場合には、保険料の引き上げとなることから、介護職員処遇改善の趣旨の理解を進めるため、事業所の管理者を含め、その給与水準の公表制度を設けるべきであるとの意見があった。」との記述が追加された。

④地域包括ケアの推進をめぐっては、報告書の「Ⅳ 今後に向けて」に記載されている内容に触れ、「地域包括ケアを推進するために「利用者負担や保険料の見直し」を盛り込むとの記述は当部会で十分に議論された結果ではなく、介護保険制度創設の理念にも反するものであることから適当ではないとの強い意見が出された。一方で、24時間対応のサービス創設等、地域包括ケアを推進していく方向性そのものへの反対はほとんど聞かれなかった。
このほか、「リハビリ」前置の考え方に対する賛否や、地域支援事業をめぐる地域間格差に対する懸念、療養型病床の廃止方針を撤回すべきといった意見が出された。

意見書のとりまとめについて諮ったところ、再度の部会開催を求める意見もあったが、最終的には山崎部会長に一任された。今後、委員からの最終的な意見を受けて修文し、公表する予定としている。

また山崎部会長は、「ペイアズユーゴー」原則を前提とすれば自ずと議論に制約を受けることとなり、厳しいご批判もあったが、結果として見直しもマイナーなものにならざるを得ない。その上で、現政権には財源の裏づけがある社会保障ビジョンの策定とそのビジョンを実現する強いリーダーシップの発揮という2点をお願いしたい、と総括、部会としての審議を終了した。

◎関連資料等掲載先ホームページ
厚生労働省ホームページ 第37回社会保障審議会介護保険部会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000x93i.html